胃がん(胃癌・胃ガン)

胃がんとは

胃について

胃胃は食べたものの消化吸収と、侵入してきた菌を殺菌する役割を担っています。入口と出口が狭くなった袋のような形状をしており、食道につながる入口が噴門部、十二指腸につながる出口が幽門部、それ以外の部分は胃体部と呼ばれています。
胃は、粘膜・筋層・漿膜の3層構造をしています。一番内側の粘膜は粘膜上皮・粘膜筋板・粘膜下層の3層になっており、中間には固有筋層、外側の漿膜は漿膜下層・漿膜の2層構造です。

胃がんの発生と進行、罹患について

胃がんが発生するのは内側の粘膜です。そこから徐々に深い位置に進行していき、粘膜下層の下にある固有筋層、そして漿膜へとがんが広がっていきます。がんが粘膜下層までにとどまっている状態を早期胃がんと呼びます。筋層や漿膜に達した場合は進行胃がんとされます。
胃がんは日本人に多く、生涯では男性の9人に1人、女性は18人に1人が胃がんと診断されています。
がんによる死亡率で、胃がんは男性の第2位、女性の第3位とされ、2015年には男性が3万人以上、女性が1万5千人以上胃がんで亡くなっています。

胃がんの原因

胃がんは胃壁の最も内側にある粘膜に発生し、がん細胞が増殖を無秩序に繰り返して大きくなって外側に向かって広がっていきます。粘膜にとどまっている間は早期がん、粘膜の下にある固有筋層にがん細胞が達した以降は進行がんと呼ばれます。
がんは筋層のさらに下にある漿膜、そしてその外側にも広がっていき、周囲の大腸や膵臓にも広がります。がんが広がっていく浸潤は、検診で見つかる大きさになるまでに何年もかかるとされています。

胃がんはそのほとんどが腺がんで、分化型と未分化型に分けられます。分化型は進行がゆるやかで未分化型は進行が速い傾向があります。なお、スキルス胃がんは粘膜の中で広がって表面には病変が現れにくい特殊なタイプのがんで、進行が速いのですが分化型であるケースが存在します。また未分化型でも粘膜部分だけに広がっている早期がんで発見されることもあります。
原因には、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染、喫煙や食生活などの生活習慣などが大きくかかわっているとされています。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合には、除菌治療に成功することで胃がんリスクが下げられるという報告がされています。

胃がんの症状

胃痛早い段階で自覚症状が現れるケースもありますが、かなり進行してからも症状をほとんど起こさないケースもあります。また、早期に現れる症状も、胃痛や胸焼け、黒っぽい便が出るといったものですから、胃炎や胃潰瘍と区別がつきません。
進行した胃がんでは、食欲不振、体重減少、飲み込みにくさ、胃が重いといったものが主な症状で、貧血、動悸、息切れなどが起こることもあります。

胃がんの検査

ABC検診

胃がんのリスクを評価する検査です。ピロリ菌感染の有無と胃粘膜萎縮の程度を調べることで、胃がんリスクをA~Cの3群に分類します。
血液採取のみで受けることができますが、スクリーニング検査であり、確定診断はできません。リスクが高い場合には内視鏡検査を受けることをおすすめします。

バリウム検査

造影剤が入ったバリウムを飲んでレントゲン撮影し、病変の有無を確認します。確定診断のためには内視鏡検査が必要です。

内視鏡検査

内視鏡検査胃の粘膜を直接観察でき、疑わしい部分があった場合には組織を採取して病理検査ができるため確定診断も可能です。
極細のスコープを鼻や口から入れて、先端についた高精細なカメラでリアルタイムに粘膜の状態を確認できます。
がん細胞には血管が集まりやすいという特徴があるため、特殊な光に切り替えて血管の状態を確認することで通常光では見落としやすい早期のがんも発見が可能です。検査時間は10分程度です。
当院では痛みや不快感のない胃内視鏡検査を行っています。内視鏡検査時に組織を採取してピロリ菌感染の有無を調べることもできます。

CT・MRI検査

胃がんであることがわかったら、どこまでがんが広がっているかを確認するために行います。胃壁の各層、リンパ節や周辺の臓器への転移がないかを調べます。

超音波内視鏡検査

胃壁のどの層までがんが広がっているかを確かめるために行われることがあります。

ピロリ菌検査と除菌治療

ピロリピロリ菌に感染していると胃がんリスクが上がります。ピロリ菌に感染していることがわかったら除菌治療が可能です。除菌治療は1週間、薬を服用するだけですが、成功した場合は胃がんリスクを低くでき、潰瘍や炎症の再発を抑制できます。

胃がんの治療

胃がんは、進行の度合いやできた場所などによってさまざまな治療法があります。主に、内視鏡的治療、外科手術、化学療法、放射線療法、緩和療法に分けられます。

内視鏡的治療

胃カメラ胃内視鏡によって胃がんを切除する治療法で、胃がんが小さくて浅く、分化度が良い場合に用いられます。粘膜の表面にできたがんの場合、粘膜下層に生理食塩水を注入して針金の輪のようなスネアをかけて締め、高周波電流を流して焼き切って切除します。
がんを生理食塩水で持ち上げるため、下の層に高周波電流へのダメージが及ぶことがありません。侵襲が少なく回復も早いのですが、小さくても深く浸潤している場合やリンパ節転移を起こしている可能性がある場合には行えません。なお、切除した組織の病理検査を行ってがんが取り切れていない可能性があれば外科手術が必要になります。

外科手術

縮小手術

腹腔鏡という内視鏡を使うなど、小さな傷で胃の一部のみを切除する方法です。傷が小さく、胃がほとんど残るため術後の経過が良好ですが、リンパ節は残すため転移の可能性がある場合は用いることができません。胃の出口である幽門部を温存する手術、神経を温存する手術など、いくつかの手法があります。

定型的幽門側胃切除術

胃の2/3~3/4という広い範囲を切除し、リンパ節は周辺や胃へ通じる血管に沿った第2群までを切除します。「定型的」と名称にあるように最もスタンダードな手術です。残った胃と腸をつなぐ手法は症例によって異なります。

噴門側胃切除術

がんが食道に近い位置にあり、早期の場合に用いられます。逆流を防ぐために、空腸の一部を食道と残された胃の間につないで再建します。

胃全摘術

病変が大きい場合や、リンパ節への転移が多い場合に用いられます。胃と周囲のリンパ節、脂肪をすべて摘出します。状態によって膵臓の切除も行うことがあります。空腸を持ち上げて食道につなぎ、空腸の途中に十二指腸をつなぎます。

拡大手術

胃やその周辺のリンパ節だけでなく、他臓器合併切除や遠くにある第3群リンパ節の切除も行います。切除する他臓器には膵臓、脾臓、大腸などがあります。侵襲が大きいため、手術自体の負担や回復に時間がかかります。

姑息的手術

胃がんによって起こった通過障害を解消するための手術です。切除不能な胃がんによって食べ物が通らなくなった部分や転移で進行し腸閉塞を起こしている部分にバイパスを作ります。

化学療法

抗がん剤を使って行う治療です。胃がんが大きくなるのを防ぐ、あるいは小さくなることが期待できますが、正常な細胞にも作用を及ぼすため、体力がない場合には用いることができません。また、効果が必ずあるというものではなく、化学療法だけで胃がんを完全に治すことは現在、まだできません。手術の前後に用いられることもあります。なお副作用の程度や内容は、抗がん剤の種類や量によって異なります。

放射線療法

がんを縮小させる目的で、身体の外から高いエネルギーを持った放射線をがんに照射する療法です。手術よりも効果が不確実なので、手術可能な胃がんに対して行われることはほとんどありません。

緩和療法

進行度や体力などによって手術や化学療法が適切ではない場合もあります。そうした際には、痛みや吐き気、不快感をできるだけ抑える緩和療法を中心に、精神的なケアまでを含んだ総合的な治療を行っていきます