潰瘍性大腸炎の診断と治療法

潰瘍性大腸炎とは

腹痛はっきりとした原因がまだわかっておらず、治療で治まっても再び症状が現れる再燃を繰り返して進行する病気です。長期間の適切なコントロールが必要であることから、大腸のびまん性炎症性疾患として厚生労働省の特定疾患に指定されていまです。「びまん」は局所ではなく広範囲に起こる炎症です。
潰瘍性大腸炎は、肛門部から炎症がはじまり、口の方向に向かって炎症が徐々に広がっていくという特徴を持っています。炎症の範囲が広くなると症状の改善が難しくなっていくため、早めの治療が重要です。病変がある場所によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類されます。発症のピークは20歳代ですが、幅広い年齢の発症がみられ、性別による偏りもありません。日本の患者数が最近、増えてきています。
適切な治療を受ければ症状は改善します。ただし、再燃させないために症状のない時にもしっかりコントロールを続けないと進行してしまい、治療が難しくなっていきます。

症状

できるだけ早い段階で診断を受け、適切な治療を開始することで炎症を広げずにコントロールしていくことができ、日常生活への影響も抑制できますので、下記のような初期症状があったら当院を受診してください。

初期症状

  • 下腹部の違和感
  • 下痢
  • 便に血が混じる

進行すると、便に粘液や膿が混じり、発熱や腹痛、体重減少、貧血、脱水などの症状が現れます。
さらに進行すると、関節や皮膚、眼、心筋、膵臓にも影響が出てくる可能性があります。

症状の出る活動期と、治まる寛解期

潰瘍性大腸炎は、症状が現れる活動期、症状が治まる寛解期を繰り返しながら進行していきます。そのため、症状が治まっている寛解期にも適切な治療を続けることが不可欠です。

潰瘍性大腸炎の原因

原因はまだわかっていません。遺伝要因や食生活、腸内細菌、ストレスなどの関与、また大腸粘膜を白血球が攻撃する自己免疫疾患とも指摘されています。

潰瘍性大腸炎の診断

大腸カメラ下痢や血便を繰り返し、発熱などがある場合には、血性下痢を引き起こす感染症ではないかをまず確認し、その上で潰瘍性大腸炎を視野に入れた検査を行います。内視鏡検査を行って、特徴的な病変の有無を確認するなど粘膜の状態を精密に観察し、病変の組織を採取して検査して確定診断となります。
脱水や貧血、栄養障害などの症状が伴っている場合には、入院治療が必要になります。

内視鏡による観察

潰瘍性大腸炎は、内視鏡検査で特徴的な病変を確認でき、さらに進行の程度などの状態を正確に観察できます。
初期の段階では、粘膜全体が腫れ、ザラついている質感があり、粘膜下の血管が見えにくいという特徴があります。出血しやすく、触れただけで出血が起こるケースがあり、膿が確認できることもあります。
炎症が強い時期には、潰瘍やびらんが多数生じて、粘膜下の組織、その下の筋層にまで潰瘍が進んでいるケースもあります。
活動期と寛解期を繰り返している場合、寛解期には炎症性ポリープや粘膜の委縮が確認でき、さらに進行していると腸粘膜の萎縮、大腸自体の短縮、大腸のヒダがなくなるなども確認できます。炎症が長く続くと大腸炎を由来とする大腸がんリスクが上昇するため、定期的な内視鏡検査による確認が特に重要になってきます。

潰瘍性大腸炎の治療

薬腸の炎症を抑える優秀な薬剤がありますので、それを使って炎症を解消していきます。ただし、潰瘍性大腸炎には完治できる内科的治療がまだありません。そのため、治療では炎症を抑えて寛解期に導き、再び活動期にならないようにしていくコントロールを行います。特に寛解期にしっかり治療を続けることが重要です。

使用する薬剤

5-ASA製薬

副作用を軽減できるメサラジンを使っています。炎症を抑える目的に加え、再燃を予防するための継続投与にも用いられます。継続投与により、大腸がんリスク軽減効果の報告もあります。

副腎皮質ステロイド薬

炎症を抑える効果が高いため、重い症状がある場合に用います。軽い症状や再燃予防には使われません。

抗TNFα受容体拮抗薬

自己免疫疾患に使われる薬で、免疫を調整して炎症反応を抑えるため、潰瘍性大腸炎でも効果が期待できます。点滴や皮下注射に使われます。

免疫調節薬・免疫抑制薬

ステロイド薬が無効、あるいはステロイド薬中止により悪化の可能性が高い場合に用いられます。この治療を受けるためには入院が必要になります。そのため、この治療が必要になった場合には連携している医療機関をご紹介しています。

血球成分除去療法

薬物療法ではなく、血液中から異常に活性化した白血球を除去します。活動期に用いられるケースが多い治療法です。この治療が必要になった場合には連携している医療機関をご紹介しています。

外科手術について

潰瘍性大腸炎は、内科的治療が効果を発揮し、活動期の炎症を抑えることだけでなく、寛解期を維持することも可能になっています。ただし、大量の出血がある、大腸に穴が開く穿孔、がんやその疑いがあるなどの場合には外科的な治療も行います。手術では、肛門機能の温存もその後のクオリティ・オブ・ライフに大きく影響します。そこで当院では、外科手術が必要になった際に医療機関とドクターをご紹介しています。